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私が完全に元の身体に戻ったころ、マチルダが私の部屋を尋ねてきた。
「デイヴィス=ファルテールのことだけど……」
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その名前を聞いただけで、私は気分が悪くなった。
私に睡眠薬を飲ませて拉致しようとしたデイヴィスは、あのあと現行犯で捕えられ、公爵家によってすぐに起訴されたらしい。
しかし、デイヴィスは裁判すら行われず『妻ローザに今後、危害を加えないこと』を約束すると保釈金を払いすぐに釈放されたらしい。伯爵の地位も剥奪されていない。
デイヴィスが重い罪に問われないのは、事件が未遂に終わったことと、睡眠薬を飲ませた相手が妻であることが大きいそうで、マチルダは私に話しながらそうとう怒っていた。
これをきっかけに、グラジオラス公爵家は『妻に危害を加える夫への厳罰化』を政治的に主張していくそうだ。
「そういう理由で、あなたはまだ『ファルテール伯爵夫人』なのよ」
ゾッとした私が「デイヴィスと離婚します」と言うと、マチルダは「あたりまえよ!」と強く賛成して協力してくれた。
マチルダが用意してくれた離婚届をデイヴィスに送りつけると、デイヴィスからは『愛しているんだ』とか『どうかしていたんだ。君とやりなおしたい』とか長々といいわけする手紙がたくさん届いたが、私は最後まで読まずにすべてやぶり捨てた。
『あなたが離婚届にサインするまで、私は何度だって裁判を起こすわ。今回のことだけじゃない。私を冷遇していたころの数々の仕打ちもすべて裁判で訴える』と手紙で脅すと、デイヴィスから、ようやくサイン入りの離婚届が送り返された。
私はそれをすぐにでも、行政に提出したかったけど、そのころになってグラジオラス公爵家から出ることに恐怖を感じている自身に気がついた。
どこかでデイヴィスに会ったらどうしよう?
また、睡眠薬を無理やり飲まされたら?
拉致されて、今度はだれも助けてくれなかったら?
そういう考えがグルグルと頭の中を回り、馬車に乗り込めない。でも、馬車に乗らないと行政に離婚届を提出できない。
私が途方に暮れていると、背後から声をかけられた。
「外出されますか?」
低く落ち着いた声はバルドだった。
「あ、はい」「でしたら、マチルダ様の命(めい)により、お供させていただきます」「マチルダ様が……」
今日、外出することをマチルダに伝えていたので、気をつかってくれたようだ。バルドの後ろでは、二人の騎士が馬を引いて立っている。
デイヴィスの件があったので、厳重に護衛をしてくれるようだ。
公爵家夫妻には、本当によくしてもらっているけど、このままずっとここに居座るわけにはいかない。
幸いなことに、私が療養中の間も、事業は滞(とどこお)りなくすすんでいる。贅沢さえしなければ、実家の世話にならなくても一人で生きていけるくらいのお金はあった。
新しい人生を始めるためにも、まずはデイヴィスとの関係を清算しなければ。そのためには、やはりなんとしてでも馬車にのらなければいけない。
そう思っても身体が動かず、私が馬車の前で立ちつくしていると、再びバルドに声をかけられた。 「馬車で出かけられるのですか?」「はい……でも」「何か問題が?」「その、怖くてのれないのです……」
「ああ」と納得したバルドは、「馬でお連れしましょうか?」と提案してくれた。
「私、馬にのったことがありません」「私と相乗りすれば大丈夫ですよ」
悩んだものの、離婚届は本人が提出したものしか受け取ってもらえない。代理を頼めない以上、絶対に私は外出しなければいけない。
覚悟を決めた私はバルドに頭を下げた。
「よろしくお願いします」「では、乗馬用の服にお着替えください。さすがにそのままでは乗れませんので」
そう言われた私はマチルダに相談して乗馬用の服を貸してもらった。乗馬経験のない私はズボンをはくのが初めてなので、とても違和感がある。
でも今は、そんなことを気にしている場合ではない。
「これで、大丈夫でしょうか?」
すでに馬を引いて、私が来るのを待っていたバルドに確認すると「良くお似合いです」と予想外にほめられた。
バルドに「どうして、驚いておられるのですか?」と尋ねられた私は、「いえ、まさかほめてもらえると思っていなかったので」と素直に返す。
「ほめますよ。真実ですから」
颯爽と馬にまたがったバルドは、「ここに足をかけてください。手を私に」と指示を出す。いわれたとおりにすると、バルドに軽々と馬上に引き上げられた。
想像していた以上に、馬上は高さがある。
「ゆっくりと走りますが、私の背にしっかりと捕まっていてください」「は、はい」
そう言われてもバルドのどこをつかんだらいいのかわからない。
戸惑っていた私は「落ちたら大怪我しますよ」というバルドの言葉に小さく悲鳴をあげた。
慌ててバルドの広い背中にピッタリとくっつき、その腰に腕をまわしてしがみつく。
バルドが小さく笑ったような気がしたけど、そんなささいなことを気にする余裕は私にはなかった。
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